Media Seminar Report
「女性の元気は、日本を変える
~私だけの花を咲かせるために、いまできること~」
関根:
対馬先生が友達のような存在になれればいい、と仰っていましたが、そういう意味では気軽に相談できる存在がいるのといないのでは、すごく違うと思います。
町:
今、ワンオペ育児、という悲しい言葉もありますが、お母さんって大丈夫?って聞かれて大丈夫じゃない、ってなかなか言えない立場でもありますね。
ディスカッション② 女性が生きやすい社会にしていくために何をすべきか、また何を変える必要があるか
町:
メンタルヘルスという言葉も出てきましたが、日本人はなかなか相談できないでいる、というような、対馬先生のお話しの中でも、日本の女性は特に頑張り屋さん、というお話がありました。
ウィメンズヘルス指数では、ウィメンズヘルスの向上には、予防医療はもちろん大切ですが、メンタルヘルスや、医療の質の高さ、居住地域の安全性、身体に痛みがないかなど個々人の健康状態を含む、5項目の引き上げが必要と考えられています。
前半では課題を挙げていただきましたが、後半は、女性が生きやすい社会にしていくためにはどうしたらいいかを考えていきたいと思います。
ダイバーシティ&インクルージョンは、女性だけに限らず、全世界が、これを目指すだけではなく、実現できる世紀にしたいなと本当に思うんですけれども、対策を含む、法律の整備の観点も含めて、皆さんにお聞きしていきたいと思います。
女性の社会進出は進んでいるものの、さらに働きやすくするためにはどのようなことが必要でしょうか?
塚原:
女性の労働参画自体は進んでおり、一昔前は「M字型カーブ」といわれる、周産期の年代の女性の就労が減っていることを示すグラフが有名でしたが、最近は平らとなりアメリカと同じくらいになってきています。しかし労働参画の「質」でいえば、意思決定のプロセスにしっかり組み込まれた状態になっているとはまだ言えません。職位が上であればいいという話ではなく、例えば非正規であったりとか、子育て中であれもこれも必死でやっていて、一生懸命やっている女性を見て、かわいそうだと思って「大変な仕事は与えないでおいてあげよう」という“いらない思いやり”があったりする。
町:
“いらない思いやり”はまさにその通りで、本人の意思を尊重して欲しいですね。
塚原:
それで、大切な場面に女性が呼ばれない、というようなことがずっと続いている状態はまだ、あるかなと思います。これを打ち破っていくためには、ビジネスの世界でも政治の世界でも、もっと女性がリーダーシップをとっていくことが重要だと考えます。もう一つは賃金で、女性の平均寿命が88歳であれば、そこまで経済的に成り立っていかないといけません。今の男女の賃金格差は目をつぶっていられない問題です。平均化されたデータで見ると女性は男性の74%くらいしか稼げていないというデータもあり、こういったものにもしっかり目を向けて解消していくことが重要になってくると思います。
町:
一日も早く、ですね。海外に比べて政界、企業でも女性リーダーが少ないのは皆さんご存知のところだと思います。海外を見るとニュージーランドでは30代の首相が生まれ、しかも在任中に出産をする、というニュースもありましたね。芸能界は、女性は活躍しやすいのでしょうか?
関根:
長女を出産してからは、まわりの理解もあり現場に子供を連れて行くことができ、まわりの人が「ようこそ」と歓迎してくれている環境はありがたかったです。次女のときはコロナの環境もあってなかなかそのようにはいきませんでしたが、長女の時は、娘は働いている母の姿をみることができ、また娘の成長をみんなが一緒に見届けてくれる、みんながサポートしてくれるということが、私にとっては仕事に行く楽しみのひとつでもありました。また育児で休んだ後に復帰して仕事を受ける際にも、子供がいるという事情を考慮した上で仕事の選択ができる環境があったことは、大変恵まれていたと感じます。
町:
フレックスで働けるのはいいですね。ライフサイクルに合わせて、という話ですが、対馬先生のお話しの中でも、1人の女性の身体の中でのライフサイクルが本当に目まぐるしいのですね。私も年齢的に色々と感じるところがありますが、これはホルモンの「攻撃」ではなくて「お守り」なんですね。身体の変化とライフスタイルの変化に合わせた制度と対策が必要ですが、対馬先生いかがですか?
対馬:
これまでは男性が働き、女性は家庭と子育てに専念していたので、職場検診や健康を取り巻く環境は女性にとって全然働きやすくなかったんですよね。健康経営と言われ、従業員が健康で長く働けることが、企業や組織にとっても大事なことであるという流れは出来てきているが、女性の健康に関する制度やサポートはものすごく遅れています。男性にはわからない健康問題があって、子供を産めない、産むのに苦労しているといった状況があることをまず言わなくてはいけない。少子化とは、もしかしたら女性からの「産みにくい」というメッセージなのではないかと思います。カップルは必ず結婚していないといけないのか、異性でないといけないのか、シングルでも子どもを産みやすい、育てやすい、働きやすい、みんないろんな条件は違うけど、それぞれ持ち寄って、それぞれの健康を守るってどういうことだろうと考えていけばよいのではないでしょうか。今日は国際女性デーだし、女性には今こういう問題があるということを初めて発信できたことは良かったなと思います。
町:
コロナ禍では、貧困でナプキンを買えない、という話が出たりして、若い女の子たちがナプキンを通して生理を語る、ということもありました。こういった声を上げることが大事だなと思いますね。ここで、自見先生から女性のメンタルヘルスに関してコメントを頂いております。
町:(自見はな子先生よりメンタルヘルスに関して事前にいただいたコメント代読)
女性のメンタルヘルスへのサポート体制は非常に重要と認識しています。出産後の女性の死因の第一位が自殺であり、また女の子が多い思春期の自殺も大きな問題となっています。メンタルヘルスに取り組む体制をさらに構築するには、かかりつけの医師や保健師、助産師、そしてかかりつけ産婦人科医など、継続的かつなんでも相談できる近くにいる人の存在が重要です。「産後ケア法案(母子保健法の一部を改正する法律案)」を成立させ、今では1740の自治体で産後ケア事業の実施が努力義務となりましたが、これもまだ一歩にすぎないと思っています。世界で最もお産が幸せだと言われているニュージーランドでは、自分のかかりつけ助産師を選べて、妊娠期から出産、そして産後直前まで同じ人が継続してケアをしてくれるということになっています。この継続したケアというものが女性にとっては重要だという感性・感覚をもって政策立案に取り組んでまいりたいと思います。
関根
かかりつけ助産師がニュージーランドは当たり前ということで、すごくいいシステムですよね。私のその助産師さんとの出会いは母親学級の途中、妊娠の後半で出会ったんですが、最終的にタイミングよく出産にも立ち会ってもらい、励ましていただいたんです。
町:
かかりつけ医というのは本当に必要ですよね。コロナ禍で女性にしわ寄せが行っているという現実は数字で出てきています。