~世界で年間57万人の女性が罹患し約31万人が亡くなっている子宮頸がんは、どのような方法で誰が判定しているのか、知っていますか?~
ウーマンズヘルス分野のリーディングカンパニーであるホロジック社(本社:アメリカマサチューセッツ州)の日本法人であるホロジックジャパン株式会社(本社:東京都文京区)は、ホロジック社が全世界に供給する、主に子宮頸がん検診で利用され従来の細胞診の問題を改善する液状化検体細胞診ThinPrep®(シンプレップ)が、米国での発売から2021年5月で25年を迎え、全世界へ10億テストの供給を達成したことをお知らせします。
ホロジック社は、子宮頸がんを早期発見するための細胞診の発展に長年寄与してきました。
世界で年間約57万人の女性が罹患し、約31万人が死亡する子宮頸がん1)。日本全国では1年間に約11,000人が診断され2,871人が亡くなっています。一生のうちにおよそ73人に1人が子宮頸がんと診断されていることになります。2)3)
1940年代にジョージ・パパニコロウ博士が子宮頸部の前がん病変を発見する染色方法を開発したことで、子宮頸がんは細胞診により発見ができる疾患となり、死亡率が大幅に減少しました。しかし、その後米国で、細胞診の精度管理に大きな問題があり子宮頸がんを見逃しているということが社会問題化し(Wall Street Journalによるスクープ記事:Pap Scandal4),5),6))、精度管理の在り方が見直されました(1988年に法律CLIA’88が改訂され細胞診の質の向上を目的とし精度の厳重な管理規制が始まる)。また細胞検査士の不足やコンピューターの飛躍的な進歩といった背景もあり、スライドグラスに塗抹固定し染色したものを顕微鏡下で観察する従来の方法から、標準化が可能な自動化機器の開発が進みました。それに伴い、欧米において1990年代後半以降、液状化検体細胞診(Liquid Based Cytology:以下LBC)の普及が進み、多くのエビデンスをもとに子宮頸がん検診の手法として従来法に代わり一般的となっています。米国では95%、英国では100%7)がLBCで子宮頸がん検診検査が行われています。
日本において、子宮頸がん検診は昭和42年(1967年)より全国一斉に開始され、昭和57年(1982年)には老人保健法が制定されたことで、子宮頸がん検診が制度化されました。LBCは、日本においては1998年に初めて検査への正式採用施設が現れ、その後徐々に採用施設が増えてきています。2000年代前半に全国に先駆けて関東の一部地域や広島、九州、新潟などの地域がLBCを導入し、2014年にはLBCが保険収載され(2014年に18点、2018年に36点加算)、さらに導入が進みました。現在では全国的に約52.4%8)まで普及しています。
【液状化検体細胞診ThinPrep®(シンプレップ)のメリット】
不適正な標本を少なくする: 医師は子宮頸部から細胞をぬぐい取りスライドに塗沫する代わりに、ThinPrep®固定保存液に入れてすすぎます。採取した細胞が回収された保存液を、自動化機器(ThinPrep®プロセッサ)により攪拌しスライドグラスに転写することで、細胞は均等に分布し、検体全体の状態が反映され、不明瞭成分を縮小した見やすい標本が作製されます。標本の作製が均一化・標準化されることにより、不適正標本が減少します。
偽陰性の削減:自動スクリーニング装置ThinPrep®イメージングシステムは、標本上の疑わしい細胞など精査が必要な領域トップ22視野を選び出し細胞検査士に提示します。装置は客観性を持って細胞を選別し、細胞検査士のスクリーニングを迅速化する役割を果たします。
多目的な検査:1つの検体から、HPV、クラミジア、淋菌などの病原体核酸検査も可能です。
写真(左)直接塗抹法の標本とThinPrepの標本(中央)ThinPrep固定保存液と採取ブラシ(右)自動スクリーニング支援装置『ThinPrep インテグレートイメージャ』
ホロジックは、細胞診の精度管理の向上に、25年にわたり製品を通じて貢献してきましたが、今後も細胞診の世界の発展を止めることはありません。スクリーニング支援装置、次世代の細胞診・デジタルサイトロジーと遠隔画像診断の開発が進んでいます。
日本においても、検診受診率向上が叫ばれており今後の検体の著しい増加の可能性が否定できません。一方で、細胞検査士の高齢化と減少傾向にある現実を踏まえると、検査精度を落とさずに検査効率を上げるにはLBCとスクリーニング支援装置をうまく組み合わせて、患者メリットのある検査法として確立していく必要があります。また、コロナ禍で普及したリモートワークを細胞検査士の仕事に取り入れていくこと、場所を超えた遠隔画像診断の技術を細胞診の世界にも導入していくためにも、検査機器メーカーとして技術の発展と普及を継続します。
ホロジックジャパンは、一人でも多くの日本の女性を子宮頸がんから救い、子宮頸がんで命を落としたり人生の選択肢をあきらめる女性が一人でも減ることを目指し、今後も細胞診の技術の発展と精度の向上、そして細胞検査士の皆様の負担軽減とワークフローの向上に寄与してまいります。
1)ICO/IARC Information Centre on HPV and Cancer (HPV Information Centre), 2019 http://www.hpvcentre.net/statistics/reports/XWX.pdf (Accessed June 1, 2020)
2)厚生労働省 全国がん登録罹患数・率報告 2017年
3) 出典:人口動態統計2018年(厚生労働省大臣官房統計情報部編)
4)Bogdanich W. Lax Laboratories. The Pap Test Misses Much Cervical Cancer Through Labs'S Errors. Wall Street Journal, Nov. 2; 1987:1.
5)Bogdanich W. False Negative: Medical Labs, Trusted As Larger Error-Free, The Wall Street Journal. 1987
6)Bogdanich W. Physicians' Carelessness with Pap Tests is cited in Procedure's High Failure Rate, The Wall Street Journal. Dec. 29, 1987
7)Rebecca Albrow, Henry Kitchener, Nalini Gupta, at el. Cervical screening in England: The past, present, and future. Cancer Pathology, 120(2), 87-96. 2012
8) 令和2年度「市区町村におけるがん検診の実施状況調査」参考資料6,P8 https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000754493.pdf
販売名:Roversサーベックスブラシ 届出番号:13B1X10179001005
販売名:ThinPrepインテグレートイメージャ 届出番号:13B1X10179001003
1.細胞検査士とは?
「がんなどの早期発見に携わる細胞診のスペシャリスト」
がんなどの悪性細胞の発見において、きわめて重要な検査法の一つが細胞診です。細胞検査士とは、人の体組織などを検査し、病気に関わる細胞や病原体を発見する仕事です。実際には人体からいろいろな方法で採取された細胞を標本にして染色し、それを顕微鏡で観察します。良性細胞か悪性細胞かを見分けたり、良性細胞の中から少数の悪性細胞を見つけ出す検査の事を細胞診(細胞検査)と言い、細胞診をする検査技師のことを細胞検査士と言います。細胞検査士が見つけ出した「がん細胞」や「あやしい細胞」に最終判定(診断)を下すのは細胞診専門医です。細胞診を行うには、緻密な正確さと高い能力が要求されるので、スペシャリストとしての能力を、日本臨床細胞学会が細胞検査士という資格として認定しています。主な活躍の場は、病院や診療所、検査センターなどで、医師が患者の病気の診断をする際に重要な役割を担っています。
日本国内の細胞検査士数は2017年9月末現在で7450名です(細胞検査士会50周年記念誌より)。
2.LBC(液状化検体細胞診)とは?
LBC(液状化検体細胞診:Liquid Based Cytology)は、子宮頸がん検査のために採取された細胞を固定保存液に集め、専用の装置で標本を作製する方法です。従来からの細胞診は、医師が綿棒やブラシ、特殊なヘラ等を用いて細胞をぬぐい取り、スライドガラスに直接塗抹する方法で行われてきました。従来の綿棒で採取する方法では、約80%の細胞が廃棄されると言われています*2-1。LBCでは、採取された細胞を細胞保存液に保存後、専用装置により標本を作製するため、採取者の採取技能に影響されず一定の検査標本ができます。
*2-1 「子宮頸部から擦過採取される細胞数とスライド標本に塗抹される細胞数」日本臨床細胞学会雑誌 33(3), 463-467, 1994-05
販売名:ThinPrep5000プロセッサ 届出番号:13B1X10179001002
ホロジック社(Hologic, Inc.)について]
ホロジック社は、女性のライフステージに影響する乳房、婦人科、骨密度に関連する疾患、子宮頸がんや性感染症に関連する検診や、検査、治療のための革新的なソリューションを提供することを通じて女性の健康(Women’s Health)とウェルビーイング(Well-being)の向上を目指すグローバルヘルスケアカンパニーです。アメリカマサチューセッツ州に本社を置き、1986年の創立から25年で、全世界15か国の拠点に従業員5,500人以上を抱え、毎年持続的な成長を続けています。診断・遺伝子検査(Diagnostics Solutions)、マンモグラフィ・骨密度測定(Breast & Skeletal Health Solutions)、婦人科用外科手術(Gynecological Surgical Solutions)、の3つの分野を主要領域とし、医療従事者が下す決断と診断における疑念を最小化し信頼を最大化するために、一歩先を行く確かさ “The Science of Sure”を提供します。
[ホロジックジャパン株式会社について]
2002年にアメリカの体外診断薬・機器企業Third Wave Technologies社の日本支社として設立。2004年株式会社サードウェイブジャパンへ改組、2012年10月にホロジックジャパン株式会社に社名変更し、体外診断用医薬品・医療機器、マンモグラフィシステム、乳房生検装置などを主力事業として活動しています。
液状化検体細胞診ThinPrepキャラクター「シンプレップちゃん」
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ホロジックジャパン株式会社
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